バランスの構成要素について

バランスの構成要素とは? ~科学的に理解する~

年齢や疾患によりバランス能力が低下すると、転倒や日常動作の不安定さにつながり、生活の質(QOL)が大きく損なわれます。
ご家族にバランス障害を抱える方がいる場合、「どのような運動が有効なのか」「どこまで改善が見込めるのか」など、不安や疑問も多いことでしょう。

本記事では、バランス能力がどのような要素で構成されているかを科学的に解説します。

バランス能力は “単一の能力” ではない

「バランス能力とは一つの概念である」といわれています。
それは、バランスが筋力や感覚、姿勢反応など複数の機能からなる統合的な能力だからです【1】。

これらは相互に影響し合い、どれか1つの機能だけが十分であっても、安定した姿勢保持や歩行は成り立ちません。

Horakらによるバランスの6つの構成要素【2】

米国のバランス評価の第一人者であるHorakらは、臨床で使えるバランステスト「BESTest」を開発し、バランス機能を以下の6つに分類しました。

生体力学的制約:体幹・下肢筋力を主体としたバランスを保つための能力についてのことです。他には、関節可動域、足部の変形などが含まれます。
高齢者では下肢筋力が低下するとバランス保持能力が低下し、転倒リスクが有意に上昇することが示されています【3】。

安定性限界と垂直性:重心を支持面内で自由に動かせる能力の高さや、重力に対して姿勢を垂直に保つ能力を示します。
脳卒中後の患者では、垂直性の障害が転倒リスクや社会参加に影響することが報告されています【4】。

予測的姿勢調節:重心の移動を予測し、予備的に筋活動などを起こせる能力のことを示します。起き上がり、立ち上がりなど、事前に重心の変化を予測して行う姿勢制御のことを指します。
パーキンソン病患者では予測的姿勢調節の障害があり、動作開始時のふらつきが転倒の主要因となります【5】。

反応的姿勢調節:咄嗟の状況で足を一歩出したりすることのできる能力のことです。外的な揺れ・押しなどに対して、素早く姿勢を回復する能力と考えるとと分かり易いと思います。
バランス訓練によって反応的姿勢調節が改善し、転倒率が40%以上低下したとするRCTもあります【6】。

感覚統合:視覚・前庭感覚・体性感覚の3つの感覚情報を適切に重みづけし、姿勢制御に活かす能力を指します。
視覚障害者や感覚神経障害のある高齢者では、感覚統合機能の障害がバランス不良と強く相関します【7】。

歩行安定性:単に歩けるだけでなく、方向転換・二重課題時(別の事を考えらながらの歩行)・障害物回避時の安定性なども含みます。
歩行時の注意分配能力が低下した高齢者は、転倒リスクが約2.5倍高くなるとされています【8】

【1】 Berg, K.: Balance and its measure in the elderly:a review. Physotherapy Canada 41, 240-246,1989.
【2】Horak, F. B., Wrisley, D. M., and Frank, J.: The Balance Evaluation Systems Test (BESTest) to differentiate balance deficits. Phys Ther 89, 484-498, 2009.Ho
【3】Muir, S.W., et al.: Balance impairment as a risk factor for falls in older adults. Clin Interv Aging, 5:745–753, 2010.
【4】Perennou, D., et al.: Lateropulsion, pushing and verticality perception in hemisphere stroke. Neuropsychologia, 46(5), 1368–1376, 2008.
【5】Vialleron, T., et al.: Anticipatory postural adjustments in Parkinson’s disease. Front Neurol, 12:640260, 2021.
【6】Sherrington, C., et al.: Exercise to prevent falls in older adults: an updated meta-analysis. Br J Sports Med, 45(3):190–195, 2011.
【7】Lord, S.R., et al.: Sensory, motor, and cognitive factors in balance decline. J Gerontol A Biol Sci Med Sci, 56(4), M176–M180, 2001.
【8】Hausdorff, J.M., et al.: Dual-task walking: a marker for falls risk in older adults? J Gerontol A Biol Sci Med Sci, 60(10):1313–1320, 2005.

バランスが悪いと感じたら…

「最近バランスが悪くなった」「つまづきやすくなった」「ふらつきやすい」と感じる方は、上記の6項目のいずれか、あるいは複数に問題がある可能性があります。
特に加齢や疾患の影響で、筋力・感覚・認知機能が複合的に低下している場合が多く、予防的な評価と早期のケアが効果的である場合があります。

バランス機能は一見漠然とした概念に思えるかもしれませんが、現代の知見では、具体的な要素ごとに測定や鍛えることが可能です。
心当たりのある方やご家族がいる方は、ぜひ理学療法士やリハビリ専門職にご相談ください。
バランス能力は、正しい方法で鍛えれば年齢に関わらず改善の可能性があると考えられます。

是非お近くの病院または専門家に聞いてみてください。



いかがだったでしょうか。
皆さんの中でもバランストレーニングについて興味がある方が多いのではないでしょうか。
次回は簡単にできるバランスエクササイズについて解説したいと思います。




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