慢性期の脳卒中に効果を認めた体幹エクササイズ

はじめに

脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)は、脳血管障害の一つとされています。
脳卒中における典型的な症状には、片側の運動麻痺、痙縮呼ばれる筋肉のこわばり、感覚障害などが挙げられます。
上記の症状に伴い、起き上がりや立ち上がり、歩行や段差昇降といった日常生活動作に支障を与えます。
症状の中で見落とされがちなのが、体幹の機能障害です。
体幹筋は、片側の脳ではなく両側の脳による神経支配があるので、脚や腕ほど片側に極端な麻痺は見つけられないことがあります。
しかし、座位での姿勢の崩れや、立位での体幹の崩れ、腹圧の低下などは、
下肢の荷重感覚や筋力、バランスを低下させたり、四肢の動かしずらさ、過剰な四肢のこわばりなどにつながります。
今回は、慢性期(発症6か月以上)でも体幹機能の向上を認めた、トレーニング方法について解説していきます。
この記事がおすすめな方
脳卒中に罹患した慢性期の方で、
・座位姿勢での体のゆがみが気になる
・麻痺側の下肢が重く感じ、スムーズに動かせない
・座位や立位においてバランスを崩しやすい
・もっと早く歩けるようになりたい
1. 体幹トレーニングの概要
2. 体幹トレーニングの具体的内容
3.体幹トレーニングにどんな効果があるのか?
1. 体幹トレーニングの概要
まず、脳卒中者における体幹トレーニングについて大まかな効果を解説します[1]。
この文献は複数の研究をまとめて結論を示すシステマティックレビューと呼ばれる種類の文献になります。
脳卒中者に対して、下記の方法で体幹トレーニングの効果を検証しています。
①体幹トレーニングを含む運動 vs 何もしないorほかの運動
②通常のケア+体幹トレーニング vs 通常のケア+何もしないor他の運動
体幹トレーニングの効果
①座位での体幹機能の向上(特に体幹の横倒しを含む動的な体幹機能、肩や骨盤をスムーズに動かす能力)
②立位バランスの向上
③歩行速度の向上
④立ち合がり、旋回、歩行速度の向上(Timed up and go test)

このように、
脳卒中者への体幹トレーニングは、体幹機能のみならず、歩行やバランス能力の向上にもつながる可能性を秘めています。
歩行練習や立ち上がり練習に関しては、取り組まれた方が多いと思いますが、体幹に対してしっかりとリハビリを行っていますでしょうか。
次に一つの論文を通して、具体的なリハビリ内容について解説します。
[1] Van Criekinge T, Truijen S, Schröder J, Maebe Z, Blanckaert K, van der Waal C, Vink M, Saeys W. The effectiveness of trunk training on trunk control, sitting and standing balance and mobility post-stroke: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2019 Jun;33(6):992-1002.
2. 体幹トレーニングの具体的内容

1つの論文を参考に、具体的なリハビリ内容について解説していきます[2]。
対象者は脳卒中発症後6か月以上経過した慢性期の方々です。
※この研究は、体幹トレーニング群 vs 従来リハビリ群(ストレッチ、筋力トレーニング、エルゴメーター)の結果で比較されています。
この論文で行った体幹トレーニング群は、従来リハビリ群に比べて下記を認めています。
①移動能力の向上(立ち上がり、歩行、旋回、着座で構成されるtimed up and go testの時間短縮)
②動的な体幹機能の向上
体幹トレーニングの内容

この画像を見て、意外と簡単だと思いませんか?
この論文では自身の最大の体幹横移動から約2cm手前にバーを設置し、そこまでいったところで10秒止めるというメニューがメインです。
片側に体幹を移動させ10秒キープを1回として片側10回を1セットとし3セット、反対側も同様に行っています。
座位だけでなく、長座位(床に座って足を伸ばした状態)で、同様の運動も行っています。
難易度調整として、お尻の下や足の下にバランスパッドも使われているようです。

このトレーニングは、週5回、1回30分にわたって行われています。
時間やセット数などを加味すると、論文におけるトレーニング量はなかなか多いですが、自主トレでも十分可能な強度かと思います。
この体幹トレーニングで、体幹機能のみならず、歩行関連機能も向上を認めたことは、興味深いですね。
脳卒中という病気の症状で考えると、四肢の末端の動かしにくさや、硬さ、こわばりなども相まって日常生活に影響を及ぼしますが、
上記の運動が苦手な方は、体幹機能も四肢の動かしにくさに影響している可能性があります。
ぜひ、参考にしてみてください。
[2]Jung K, Kim Y, Chung Y, Hwang S. Weight-shift training improves trunk control, proprioception, and balance in patients with chronic hemiparetic stroke. Tohoku J Exp Med. 2014 Mar;232(3):195-9
3.まとめ
今回は、慢性期脳卒中者における体幹トレーニングの具体的内容について解説しました。
体幹トレーニングを行うことで歩行機能やバランスにも良い影響があります。
特に今回の論文では、慢性期でも効果を認め、なおかつ歩行能力向上につながった貴重な文献をもとに、エクササイズについて解説しました。
量はそこそこありますが、内容自体は自主トレでも行うことができるトレーニングかと思います。
脳卒中の歩行障害や体幹機能低下にてお悩みの方に参考になれば幸いです。
脳卒中の体幹トレーニングのさらなる効果が知りたい方はこちらもご覧ください。
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保有資格:理学療法士、修士(理学療法学)、認定理学療法士(運動器)
住環境コーディネーター2級
略歴:理学療法士免許取得後、大学病院に勤務し、整形外科、神経疾患、がんなど様々な疾患の理学療法に従事する。
その後、大手自費リハビリ施設にて勤務し、医学的根拠(エビデンス)の基礎を学び、店舗・訪問リハビリにて利用者様に尽力する。
エビデンスに基づくサポートができるように、多数の学会発表や論文執筆を通じてさまざまな疾患やトレーニングの学習に励む。
過去の経験を活かし、在宅でも本格的なリハビリをお届けするために、自費訪問リハビリサービスのRehab Tokyoを設立。

