圧迫骨折の具体的なリハビリについて

高齢者の圧迫骨折に対するリハビリ ―姿勢改善・背筋筋力強化を中心に ―
今回は前回に引き続き、圧迫骨折について具体的なリハビリ内容を紹介したいと思います。
脊椎(腰椎・胸腰椎)の圧迫骨折は、高齢者に多くみられる骨折であり、痛みだけでなく、姿勢の崩れ・バランス低下・転倒リスク増大 を引き起こします。
近年の研究では、適切なリハビリ介入により姿勢・背筋筋力・身体機能が改善する可能性 が示されています。
この中でも姿勢、特に垂直に脊柱を保つことはバランスを維持する上で非常に重要な要素になります。
https://rehabtokyo.com/バランスの構成要素について/
本記事では、科学的根拠に基づいた具体的なリハビリ内容を解説します。
1.姿勢改善がなぜ重要なのか
2. 背筋筋力強化 ― 圧迫骨折リハビリの中核
3.体幹安定性と腹圧 ― 背筋だけでは不十分
4.日常生活動作(ADL)を向上させるリハビリ
5. まとめ
1.姿勢改善がなぜ重要なのか?
圧迫骨折後は、椎体の潰れによって背骨が前に曲がる 円背(後弯)姿勢、猫背 を呈しやすくなります。
この姿勢変化は、
- 重心が前方へ移動する
- 立位・歩行時の安定性が低下する
- 背筋の活動量が減少する
などの悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
実際に、円背の姿勢変化のある患者は、ないもの者べて姿勢制御能力・身体機能が有意に低下している ことが報告されています1)。
この研究では、円背姿勢の者では、
障害物をまたぐ際のの左右の動揺が大きく、下肢筋力等も低下、転倒自己効力感(転倒しないと思えるか)が低下していることが指摘されています。
1)Sinaki M, Brey RH, Hughes CA, Larson DR, Kaufman KR. Balance disorder and increased risk of falls in osteoporosis and kyphosis: significance of kyphotic posture and muscle strength. Osteoporos Int. 2005 Aug;16(8):1004-10.
姿勢改善の重要性
円背姿勢である者は、身体の重心変化、歩行安定性の低下、体幹・下肢筋量低下など、さまざまな悪影響がある。
身体の垂直性(体がまっすぐに整っていること)は、バランス構成要素の一つであるといわれている。
円背を改善することで、上記のリスクの低減させる可能性がある。
2. 背筋筋力強化 ― 圧迫骨折リハビリの中核

なぜ背筋なのか?
圧迫骨折患者では、脊柱起立筋を中心とした背筋群の筋力・筋持久力低下 が報告されています2)。
2) Makarova EV, Marchenkova LA, Eryomushkin MA, Styazkina EM, Chesnikova EI. Balance and muscle strength tests in patients with osteoporotic vertebral fractures to develop tailored rehabilitation programs. Eur J Transl Myol. 2020 Sep 9;30(3):9236.
背筋は、
- 背骨を支える
- 立位・歩行時の姿勢を保つ
- 転倒時の立て直し反応に関与する
という重要な役割を担っています。
圧迫骨折のリハビリエビデンス
ランダム化比較試験では、
運動療法(特に背筋・体幹筋を含むプログラム)を行った圧迫骨折患者は、背筋持久力・身体機能・痛みが有意に改善した ことが報告されています3)。
この研究では、壁やタオルを使ったストレッチ、杖を使った上肢運動、座位での腹横筋収縮練習など複合的な介入を10週間にわたり行っています。
実は、姿勢改善に関しては、他の介入との比較では有意な差を認めていません。。。
介入群10人の研究であることも効果を認めなかった理由の一つと考えられますが、姿勢を改善するためにはより画一的ではない専門的な個人向けの介入が必要である可能性があります。
もう一つの研究を紹介します4)。
この研究では、うつ伏せでの体幹の反り、四つ這いでの片腕上げなどを6週間行い、
理学療法士管理下の指導やホームエクササイズにて姿勢の改善を認めています。
圧迫骨折の姿勢改善におけるエビデンスは、現在のところ非常に限られていますが、 (4) の研究のようにうつ伏せや四つ這いでの腕上げや上体の反りを活かすことは重要だと考えられます。
3) Bennell KL, Matthews B, Greig A, Briggs A, Kelly A, Sherburn M, Larsen J, Wark J. Effects of an exercise and manual therapy program on physical impairments, function and quality-of-life in people with osteoporotic vertebral fracture: a randomised, single-blind controlled pilot trial. BMC Musculoskelet Disord. 2010 Feb 17;11:36.
4) Çergel Y, Topuz O, Alkan H, Sarsan A, Sabir Akkoyunlu N. The effects of short-term back extensor strength training in postmenopausal osteoporotic women with vertebral fractures: comparison of supervised and home exercise program. Arch Osteoporos. 2019 Jul 27;14(1):82.
3.体幹安定性と腹圧 ― 背筋だけでは不十分

背筋だけでなく、腹筋・深部体幹筋を含めた体幹安定性 も重要であると考えられます。
円背では、腹部側がつぶれてしまうため、背筋が伸び、腹筋が縮んだ状態になり、体幹の安定性が損なわれると考えられます。
このことは、体幹の垂直性の問題だけでなく、呼吸の浅さや、体幹筋の感覚低下(体幹筋が伸び縮みする感覚)にもつながり、
姿勢安定に重要な機能が低下することが想定されます。
研究では、高齢者において、体幹筋量や体幹機能は歩行能力・バランス能力と関連する ことが示されています4)。
4) Hicks GE, Simonsick EM, Harris TB, Newman AB, Weiner DK, Nevitt MA, Tylavsky FA. Trunk muscle composition as a predictor of reduced functional capacity in the health, aging and body composition study: the moderating role of back pain. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2005 Nov;60(11):1420-4.
そのため、圧迫骨折のリハビリでは、
- 腹圧を意識した呼吸
- 体幹の同時収縮(ブレーシング)
- 体幹の遠心性収縮(伸ばしながら体幹筋を収縮させる練習)
- 動作中の体幹安定化練習(体幹を動かさずに四肢を動かす練習)
といった要素を組み合わせます。
これにより、姿勢保持能力の向上と動作時の不安定性軽減 が期待されます。
文献上では、単純な上体起こしのような腹筋運動ではなく、
深部筋を賦活をねらった腹筋(腹横筋トレーニング)やプランクなどの体幹トレーニングを多く見かけます。
4. 日常生活動作(ADL)を向上させるリハビリ
圧迫骨折後は「動くのが怖い」という心理的要因も加わり、活動量が低下します。
そのため、
- 椅子からの立ち上がり
- 歩行
- 階段昇降
といった 生活に直結した動作練習 も継続していかなければなりません。
観察研究ではありますが、早期からリハビリを行った圧迫骨折患者は、ADL回復が良好である といった報告もあります。
家族や専門家のサポートも受けながら、圧迫骨折後も少しずつ活動量を増やせると良いですね。
5. まとめ
今回も圧迫骨折のについての姿勢や体幹筋のエクササイズについて解説しました。
姿勢を改善させることは非常に有益だと思われますが、エビデンス(確からしさ)はまだまだ不足していると考えられます。
しかし、背筋や腹筋のエクササイズ、呼吸のエクササイズなど行いつつ、活動量を維持することは重要な可能性が高いです。
圧迫骨折にてお悩みの方に少しでも参考になれば幸いです。
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保有資格:理学療法士、修士(理学療法学)、認定理学療法士(運動器)
住環境コーディネーター2級
略歴:理学療法士免許取得後、大学病院に勤務し、整形外科、神経疾患、がんなど様々な疾患の理学療法に従事する。
その後、大手自費リハビリ施設にて勤務し、医学的根拠(エビデンス)の基礎を学び、店舗・訪問リハビリにて利用者様に尽力する。
エビデンスに基づくサポートができるように、多数の学会発表や論文執筆を通じてさまざまな疾患やトレーニングの学習に励む。
過去の経験を活かし、在宅でも本格的なリハビリをお届けするために、自費訪問リハビリサービスのRehab Tokyoを設立。


