変形性膝関節症の膝の動きと修正方法を解説

はじめに:変形性膝関節症について
変形性膝関節症(膝OA)は、日本の高齢化に伴い患者数が急増している国民病です。
自覚症状がある人が約1,000万人、潜在患者は最大3,000万人にのぼると推定されています。
特に女性や60歳以上に多く、膝関節の軟骨がすり減り、炎症が起きることで痛みや膝の筋力低下、そして歩行困難になるリスクがあるといわれています。
原因は、関節軟骨の老化、肥満や遺伝なども関与しているといわれています。
また、過去に膝関節の周囲の骨折や靭帯損傷、半月板損傷など生じた方で、変形性膝関節症が生じやすいことが分かっています。
今回は、膝OAにおける膝関節や股関節、足関節など含めた運動学的観点で、
①関節にどのような捻じれや動きが生じているか
②どんな運動で変形や捻じれを抑えることができそうか
これらを、最新のエビデンスから解説していきます。
変形性膝関節症においては、膝関節だけに目を向けてしまうとなかなか症状が改善しない場合があります。
膝関節は、股関節と足関節に挟まれていますので、上下のバランスで捻じれや歪みを生みやすいと考えられています。
1. 膝OAで生じている膝の運動の正体
2. 捻じれや変形、痛みを抑え、膝を守るための運動療法エビデンス
3.まとめ
1. 膝OAで生じている膝の運動の正体
特に日本人に多い内側型膝OA(O脚になりやすい)において、膝関節には単なる屈伸運動ではない負荷がかかっています。
それは、膝内転モーメント(KAM:Knee Adduction Moment)と呼ばれています。
KAMは膝OAの進行に関して重要視される指標の一つで、三次元動作解析装置などを用いて計測することができます[1]。
KAMをわかりやすく説明するとしたら
歩行中に膝を内側に押しつぶそうとする力のことで、膝OA患者ではこのKAMが健常者よりも有意に高いことが示されています[2]。

O脚とKAM:
KAMが高い膝OAのかたは歩行の片脚になる際に、膝には「O脚」を強めるような回転力が加わります。
これが繰り返されることで、内側の軟骨が物理的に摩耗していきます。
さらに悪化すると関節裂隙(関節の隙間)が狭小化し、関節の膜などの炎症にも結び付くと考えられています。
歩行時に床から受ける衝撃には、2つの強い衝撃が加わります。
それは、踵接地時と足が床から離れる瞬間の2つです。
その中でも特に第1ピーク(踵が接地した直後)の大きさがOAの痛みや進行速度と密接に関係していると報告されています。[3]。
KAMの大きさは、膝OA悪化のリスク因子の一つです。
膝関節の回旋異常(スクリューホームムーブメントの消失):
本来、膝を伸ばし切る際には、脛骨(すねの骨)がわずかに外側に回旋する「スクリューホームムーブメント」が起こります。
この運動が示すように、本来膝は屈伸だけでなく、最後まで伸ばすときや大きく曲げるときには、わずかな回旋が生じることが分かっています。

しかし、OA患者ではこの回旋メカニズムが破綻し、逆に脛骨の内旋や大腿骨の外旋といった「捻じれ」が生じることが報告されています[4]。
この回旋のミスマッチが、半月板や軟骨への剪断力(ズレる力)となり、組織破壊を加速させると考えられています。
隣接関節(股関節・足関節)の影響:
膝の捻じれや変形は、膝関節単体の問題とは限りません。
股関節の影響:股関節の外転筋(中殿筋など)が弱いと、歩行中に骨盤が反対側に沈み込み(トレンデレンブルグ徴候)、その結果として膝の内方ストレス(O脚変形に近づいてしまう)が増大します[5]。
足関節の影響:足部がいわゆる「扁平足(過回内)」の状態にあると、脛骨が内側に倒れ込み、膝の外旋・内旋バランスを崩す要因となります[6]。
2. 捻じれや変形、痛みを抑え、膝を守るための運動療法エビデンス

これらの「捻じれや変形」をどのように止めればよいのか。
最新の介入研究から、いくつかのアプローチを紹介します。
※あくまで下記のエビデンスは、各対象者に介入を実施した際に平均的には改善方向であったもので、各個人にすべて当てはまるわけではありません、参考程度にご覧ください。
●股関節外転筋トレーニング
この運動は股関節の外側についている中殿筋をメインのターゲットとした運動です。
最新のメタアナリシスでは、股関節強化を併用したリハビリが、膝単独のトレーニングよりも痛みと機能改善において優れていることが示されています[7]。
一方で、KAM(O脚変形を引き起こす力学的なストレス)は股関節強化では低下させることができませんでした。
Thorpらが2010年に発表した研究では、股関節外転筋トレーニングがKAMを9%減らしたと報告されており、
効果があるとされている報告もいくつか散見されます[8]。
特に、罹患側の片脚支持の時期に、反対側の骨盤が落ち、重心が反対に傾く場合(トレンデレンブルグ徴候)、効果を認める可能性がありますね。
●歩行の指導
まずはどのような歩行の指導がKAMの減少させるかを検証した研究を紹介します[9]。
KAMを減少させる歩行指導内容
①杖の使用、②歩隔(足の横幅)の増加 ③足の接地時、膝を内側に入れる ④股関節内旋増加(股関節を内側に入れる) ⑤足の内側に体重をかける ⑥痛みのある脚への荷重時、体幹を同方向に傾ける
以上の6つがKAMを減らす歩行指導でした。
続けて解説します。
歩行指導とKAMの関係に関する別の研究によると[10]
①痛みのある脚への荷重時、体幹を同方向に傾ける ②股関節内旋増加(股関節を内側に入れる) ③足の接地時、膝を内側に入れる
以上の3つがKAMを減らす歩行指導でした。
最後にKAMを減らすためのつま先向きについて検討した研究では[11]、
踵接地時のKAM減少には10度内向き(親指が内側に入るように) が効果のある可能性が高いようです。
この研究では、痛みのある脚への荷重時、体幹を同方向に傾ける戦略も優れていると報告されています。
KAM(O脚変形を引き起こす内側の力学的ストレス)を減らす戦略について、みなさまもいくつか当てはまるものがあったのではないでしょうか。
痛みや変形を避けるために、杖をついたり、体幹を痛みのある側に寄せたりなど、自然に対応している方もいるかと思います。
実際に、歩行指導は痛みの軽減にも役立つことが示されています[12]。
しかし、歩行を変えることはあくまで代償動作であるため、大きく変更することで別の場所の痛みや機能低下など、悪影響が出る可能性もあると思います。
上記の戦略は参考程度に留めて、より詳細な調整は専門家に相談するのがよいかと思います。
[1]Felson DT. Osteoarthritis as a disease of mechanics. Osteoarthritis Cartilage. 2013;21(1):10-15.
[2]Foroughi N, et al. Lower limb regenerative biomechanics in patients with knee osteoarthritis: a systematic review. The Knee. 2011;18(5):273-281.
[3]Hall M, et al. Knee adduction moment and extension moment: relationships with cartilage volume and pain in knee osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2018;26(11):1480-1487.
[4]Hamel AJ, et al. Relative motion of the tibia and femur and the screw-home mechanism. Journal of Biomechanics. 2014;47(11):2610-2615.
[5]Malfait AM, et al. Biomechanical phenotypes of knee osteoarthritis: meta-analysis of the knee adduction moment. Arthritis Care Res. 2020;72(11):1540-1550.
[6]Levinger P, et al. Foot posture, foot function and knee osteoarthritis: the Biomechanics of the Lower Limb in Health and Disease study. Arthritis Research & Therapy. 2010;12(1):R29.
[7]Thomas DT et al. Hip abductor strengthening in patients diagnosed with knee osteoarthritis – a systematic review and meta-analysis. BMC Musculoskelet Disord. 2022 Jun 29;23(1):622.
[8]Thorp LE, Wimmer MA, Foucher KC, Sumner DR, Shakoor N, Block JA. The biomechanical effects of focused muscle training on medial knee loads in OA of the
[9]Simic M, et al. Gait modification strategies for altering medial knee joint load: a systematic review. Arthritis Care Res (Hoboken). 2011 Mar;63(3):405-26.
[10]Bowd J, et al. Does Gait Retraining Have the Potential to Reduce Medial Compartmental Loading in Individuals With Knee Osteoarthritis While Not Adversely Affecting the Other Lower Limb Joints? A Systematic Review. Arch Rehabil Res Clin Transl. 2019 Sep 5;1(3-4):100022.
[11]Silva MDC, et al. Effects of neuromuscular gait modification strategies on indicators of knee joint load in people with medial knee osteoarthritis: A systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2022 Sep 21;17(9):e0274874.
[12]Tamura H, et al. Clinically significant effects of gait modification on knee pain: A systematic review and meta-analysis. J Back Musculoskelet Rehabil. 2024;37(1):3-12.
3.まとめ
今回は、膝OAにおける膝の運動やストレスについて、膝関節の変形ストレスを減少させる可能性のある介入について紹介いたしました。
特に、歩行の方法を変更することは手軽に実施可能で、ストレスを軽減させる可能性がありますが、自己判断で行ってしまうと悪影響が出る場合がありますので、痛みや症状をなどよく確認しながら慎重に検討してくださいね。
膝OAの変形や痛みにお悩みの方に参考になれば幸いです。
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保有資格:理学療法士、修士(理学療法学)、認定理学療法士(運動器)
住環境コーディネーター2級
略歴:理学療法士免許取得後、大学病院に勤務し、整形外科、神経疾患、がんなど様々な疾患の理学療法に従事する。
その後、大手自費リハビリ施設にて勤務し、医学的根拠(エビデンス)の基礎を学び、店舗・訪問リハビリにて利用者様に尽力する。
エビデンスに基づくサポートができるように、多数の学会発表や論文執筆を通じてさまざまな疾患やトレーニングの学習に励む。
過去の経験を活かし、在宅でも本格的なリハビリをお届けするために、自費訪問リハビリサービスのRehab Tokyoを設立。


