高齢者の筋力の低下についてお話

本日は高齢者の筋力低下について解説していきます。誰しも30から40歳を過ぎてくると、体の衰えを感じると思います。一般的に筋力は、その年代から年齢を重ねるごとに落ちていきます。筋力の衰えは実際にどの程度なのか、筋力はどのように落ちていくのか、筋力の衰えを簡単にチェックする方法、最後に筋力を上げるにはどのようにすれば良いのかについてお話していきます。
1.高齢者の筋力の低下について
2.筋力低下をチェック! 指輪っかテスト
3.高齢者でも筋力は上がるのか

高齢者の筋力低下について解説していきます。研究に基づいた報告では、50-60歳を超えると筋力は著しく低下を認め、筋力の減少率は年間2-4%と報告されています1-3)。筋肉は全身にありますが、上半身よりも下半身のほうが筋力が低下しやすいことも明らかになっています。また、筋力の低下は、筋量の低下よりも3倍程度早く進むことが明らかになっています4,5)。これらの研究から、筋量の低下よりも筋力のほうが衰えがはやく、筋肉の質の低下が指摘されています。そのほか、加齢に伴い筋力が低下する要因には、神経による影響(運動単位の減少、神経伝達速度の低下)なども指摘されています。これらのことから、加齢に伴う筋力の低下はいくつかの特徴をもっています。加齢に伴う筋量低下と筋力の著しい低下については「サルコペニア」と呼ばれています。サルコペニアは要介護状態の前段階であるフレイル(虚弱)の最大の危険因子と言われています。次の段落で簡単にチェックできる方法がありますので、みてみましょう。
1) Murray MP, Gardner GM, Mollinger LA, Sepic SB. 1980. Strength of isometric and isokinetic contractions: Knee muscles of men aged 20 to 86. Phys Ther 60: 412–419.
2) Bassey EJ, Harries UJ. 1993. Normal values for handgrip strength in 920 men and women aged over 65 years, and longitudinal changes over 4 years in 620 survivors. Clin Sci (Lond) 84: 331–337.
3) Delmonico MJ, Harris TB, Visser M, Park SW, Conroy MB, Velasquez-Mieyer P, Boudreau R, Manini TM, Nevitt M, Newman AB, et al. 2009. Longitudinal study of muscle strength, quality, and adipose tissue infiltration. Am J Clin Nutr 90: 1579–1585.
4) Goodpaster BH, Park SW, Harris TB, Kritchevsky SB, Nevitt M, Schwartz AV, Simonsick EM, Tylavsky FA, Visser M, Newman AB. 2006. The loss of skeletal muscle strength, mass, and quality in older adults: The health, aging and body composition study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 61: 1059–1064.
5) Koster A, Ding J, Stenholm S, Caserotti P, Houston DK, Nicklas BJ, You T, Lee JS, Visser M, Newman AB, et al. 2011. Does the amount of fat mass predict age-related loss of lean mass, muscle strength, and muscle quality in older adults? J Gerontol A Biol Sci Med Sci 66: 888–895.
加齢による筋力低下(サルコペニア)について簡単に確認できる方法が指輪っかテストと呼ばれるものです。イラストを下に入れていますので確認してみましょう。まず、椅子に座り膝を90度に曲げた状態で、足の裏を地面につけます。その後、自分の両手の人差し指と親指を使って輪っかを作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲みます。指が届かなければサルコペニアの可能性は低く、ふくらはぎと手の間に隙間が出来る場合は、筋肉量が減っていることが示唆され、サルコペニアの可能性が高いです。
指輪っかテスト

最後に、高齢者でも筋力は上がるのかという視点で解説していきます。結論は高齢者でも筋力は上がります。特に抵抗運動(レジスタンストレーニング)と呼ばれる機械や重りを用いた筋力トレーニングは筋力の向上が期待できます。しかし、いざ行おうとすると抵抗をどのように決めるか難しい可能性があります。実際に、いくつかの報告をまとめている論文の情報から、筋力向上の効果が出ていなかった場合は、負荷量の低さが指摘されています1)。負荷量を適切に設定できれば、専門家がそばにいなくとも筋量を改善させる報告もあります。情報通信技術(zoomなど)を利用した遠隔リハビリテーションを行った研究において、約80歳代のかたを対象とし遠隔の運動指導を3か月実施したところ、下肢の筋肉量、四肢の筋肉量、全身の軟部組織の量が改善したと報告されています2)。このことから、専門家による負荷量の調節は、かなり重要である可能性があります。2番の論文では、3か月の間に最低でも48時間のトレーニング時間を作ること(ウォームアップ含む)、運動のきつさは”ややきつい”から”かなりきつい”の間で構成され、負荷量が管理されています。効率的に筋力や筋量の向上を図るためには、一度でも専門家にみてもらうことが重要かもしれません。
1) Cadore EL, Rodríguez-Mañas L, Sinclair A, Izquierdo M. Effects of different exercise interventions on risk of falls, gait ability, and balance in physically frail older adults: a systematic review. Rejuvenation Res. 2013 Apr;16(2):105-14.
2) Hong J, Kim J, Kim SW, Kong HJ. Effects of home-based tele-exercise on sarcopenia among community-dwelling elderly adults: Body composition and functional fitness. Exp Gerontol. 2017 Jan;87(Pt A):33-39.

いかがだったでしょうか。筋力や筋量を増加させるためには知識と負荷量がとても重要であると解説いたしました。しかし、いきなり完璧にすべてをこなす必要はなく、”歩いて買い物に行く”、”家事をしているときに踵上げを10回”、”エスカレーターを使わずに階段を使う”など、身近なところから変えるだけでも、運動になります。少しずつの変化を楽しみながら、トレーニングが出来るといいですね。
Rehab Tokyoではリハビリに関する有益な情報を発信していきます。
ではまた次回!
高齢者に多いフレイル(虚弱)の話
自宅でリハビリを受けるためのお金の話

保有資格:理学療法士、修士(理学療法学)、認定理学療法士(運動器)
住環境コーディネーター2級
略歴:理学療法士免許取得後、大学病院に勤務し、整形外科、神経疾患、がんなど様々な疾患の理学療法に従事する。
その後、大手自費リハビリ施設にて勤務し、医学的根拠(エビデンス)の基礎を学び、店舗・訪問リハビリにて利用者様に尽力する。
エビデンスに基づくサポートができるように、多数の学会発表や論文執筆を通じてさまざまな疾患やトレーニングの学習に励む。
過去の経験を活かし、在宅でも本格的なリハビリをお届けするために、自費訪問リハビリサービスのRehab Tokyoを設立。



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