バランスの構成要素 ~パート②~

皆さまはなぜ転倒しやすいか理解していますか?
「最近よくつまずく」
「ふらつきが増えてきた」
「転びそうで外出が怖い」
このようなお声は頻繁に耳にします。
なぜバランスを崩したり、ふらついたり、転倒しやすいのでしょうか、、、
多くの方は「年だから仕方ない」「筋力が落ちたから」と考えます。
しかし、皆さまがこのような不安を感じているなら、まず考えていただきたいことがあります。
転倒やバランスの悪さには、原因のパターンが存在します。
その原因パターンは、人によって違います。
本記事では、最新の姿勢制御理論に基づき、バランスに関して体系的に解説し、バランスの悪さという曖昧で使いやすい言葉を紐解いていきます。
転倒の恐怖やふらつきなどでお悩みの方が少しでも自身の体を理解できますように丁寧に解説していきます。
ぜひ、あなた自身の状態をチェックしながら読み進めてください。
1. 網羅的バランス評価の最高峰
2. バランスの6つの分類
3.生体力学的制約
4.安定限界,垂直性
5. 予測的姿勢制御
6. 反応的姿勢制御
7. 感覚機能
8. 歩行安定性
9. まとめ
1.網羅的なバランス評価の最高峰

転倒やバランス低下、ふらつきは突然起きるように思えます。
しかし身体の中では、すでに複数の機能が低下しています。
姿勢やバランスを科学的に分析する評価法に、Balance Evaluation Systems Test(BESTest)があります。
この評価は、神経科学者のFay B. Horakらによって開発されました。
BESTestでは、バランスを6つの機能に分けて点数化することができ、自身にとって苦手な項目がどれか、理解することができます。
多くの臨床で用いられるバランステストは、簡便なものが多いですが、BESTestは網羅的で、細部への理解は抜群だと思われます。
この記事では、各項目でどのような評価を用いてバランスをチェックしているか、詳しく解説していきます。
ぜひ、ご自身で苦手な項目をみつけ、トレーニングの参考にしていただければと思います。
2. 6つのバランス特性

BESTestはバランスを6つの要素に分類しています。
生体力学的制約、安定限界/垂直性、予測的姿勢制御、反応的姿勢制御、感覚機能、歩行安定性です。
これらの6つ分類を理解すれば、自身やご家族などのふらつきやバランス低下の要因に迫ることができると思います。
3.生体力学的制約(Biomechanical Constrains)

いきなり難しい言葉がでてきました。
簡単にいうと、バランスをとるために必要な筋力や体の柔らかさ、適した姿勢(姿勢のズレ、下肢の変形)がないか ということになります。
具体的には、
①下肢の変形や痛みの有無、②姿勢がまっすぐに整っているか、③足関節の筋力(かかと上げ)、④片足立ちが10秒程度可能か、⑤床への座りと床からの立ち上がりができるか、を確認します。
変形性膝関節症や股関節症など下肢に痛みや変形が起きる場合や姿勢の悪さなどもこの分類に入ります。
該当する方も非常に多いのではないでしょうか。
姿勢や動作を考慮し、力学的にバランスに影響が出る側面が生体力学的制約に含まれます。
4. 安定限界, 垂直性(Stability limits/verticality)

これは、身体の重心を左右や前方へどの程度傾けられるか、そして垂直に戻ることができるか ということを示します。
バランス制御を考える上で、自分で重心を傾けられる範囲(安定限界)、そして元の垂直に戻る能力は広ければ広いほどバランスを損なわなくて済みます。
具体的には、
①椅子に座って体幹を横に大きく傾けて戻る能力があるか、②立位にて腕を前方に大きく動かせるか、②側方に大きく動かし重心を維持することができるか で評価されます。
個人的には後方への重心移動能力も姿勢保持においてはとても重要だと思います。
脳卒中の方においての側方への重心移動能力低下や、パーキンソン病における前方リーチ能力の低下、失調における動作の重心の維持能力低下は、この分類に含まれます。
安定した床において、重心を大きく動かし元に戻れる能力が、安定限界, 垂直性であるといえます。
5. 予測的姿勢制御(Anticipatory Postural Adjustment)
これは、動作を行う際の外乱(揺れ)をあらかじめ予測し、制御する能力を指します。
バランス制御の観点では、立ち上がりや歩行などの開始時には、太ももやふくらはぎなどの足の筋よりも先行して、深部体幹筋が収縮することにより胴体を安定させることがわかっています。
これにより下肢の運動をより円滑に行うことができ、動作の遂行に役立つと考えられています。
具体的には、
①手を使わず立ち上がれるか、②つま先立ちキープ、③片足立ちキープ、④段差への足上げ(素早く)⑤立位でのバンザイ で評価されます。
動作(立ち上がり、歩行、段差昇降)の開始時にふらついたりすることが、この分類に含まれます。
6. 反応的姿勢制御(Reactive Postural Responses)

これは、動作時の姿勢の乱れに対して反応する能力を指します。
バランス制御の観点では、突然乱れた姿勢や重心移動に対して、反応し上体を戻すことは、転倒予防やふらつきに関して高い重要性をもっています。
具体的には、
①前方や後方からの外乱に対して反応できるか、②前方・後方・側方の支持物が外れた際に素早く足を出すことができるか で評価されます。
転倒を繰り返してしまう方や、パーキンソン病のHY分類3以上の方など姿勢反射が低下している場合は、この分類に含まれます。
ふらついた際などに反応できず、転倒や手をついてしまったなど、心当たりのある方は、こちらの要素が不足している可能性があります。
7. 感覚機能(Sensory Orientation)
これは、主に視覚、体性感覚、前提感覚がバランスに及ぼす影響についての評価を指します。
バランス制御の観点では、床面や視覚情報の乱れなどさまざまな感覚刺激の遮断時に、どの程度バランスを保つことができるのかを知ることができます。
バランスを制御するときに、視覚に頼りすぎていたり、足底の感覚に頼りすぎている場合などは、この検査である程度把握できます。
具体的には、
①硬い地面での開眼立位保持、②硬い地面での閉眼立位保持、③柔らかい地面での開眼立位保持、④柔らかい地面での閉眼立位保持、⑤傾斜での姿勢保持 で評価されます。
足部の感覚障害や、前庭機能低下を疑うような症状がありふらつく場合は、この分類に含まれます。
8. 歩行安定性(Stability in Gait)

今までの項目に比べて理解しやすいかもしれませんね、歩行の安定性です!(笑)
歩行の安定性と一言にしても、一定以上の速度、ターン、頭を水平に動かしながらの歩行、障害物をまたぐ、計算しながらの歩行など、さまざまな要素を含んでいます。
バランスを加味した歩行と考えると、上記の項目は理にかなっているように思えますね。
はじめは歩行を目標にしていたが、次に周囲の景色を見ながら、段差をまたぎながら、別のことを考えながらなど、徐々に難易度を挙げていく作業も、バランスを高めるためには重要なことだということが理解できます。
9. まとめ
今回は、転倒やふらつきに関するバランスについて詳しく解説してみました。
自身のバランス低下などに関して、学びになる点もいくつかあったのではないでしょうか。
私自身も臨床において学ぶことが多いバランス能力についてですが、大きく6つの観点で考えてみるとわかりやすいと思います。
もし運動などに迷ったときは、まず上記を振り返り、自身の苦手な項目について練習をしてみてはいかがでしょうか。
バランス低下や転倒歴のある方に少しでも参考になれば幸いです。
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保有資格:理学療法士、修士(理学療法学)、認定理学療法士(運動器)
住環境コーディネーター2級
略歴:理学療法士免許取得後、大学病院に勤務し、整形外科、神経疾患、がんなど様々な疾患の理学療法に従事する。
その後、大手自費リハビリ施設にて勤務し、医学的根拠(エビデンス)の基礎を学び、店舗・訪問リハビリにて利用者様に尽力する。
エビデンスに基づくサポートができるように、多数の学会発表や論文執筆を通じてさまざまな疾患やトレーニングの学習に励む。
過去の経験を活かし、在宅でも本格的なリハビリをお届けするために、自費訪問リハビリサービスのRehab Tokyoを設立。


