腰椎圧迫骨折の症状やリハビリについて

今回は、高齢者や女性において発症しやすい、腰椎圧迫骨折の症状やリハビリコンセプトについて解説していきます。
痛みや姿勢の変化など、日常生活に支障をきたしやすい疾患なのでリハビリについての参考になれば幸いです。
腰椎圧迫骨折とは?
腰椎圧迫骨折(lumbar vertebral compression fracture)は、脊椎の骨(椎体)が縦方向に押し潰されるように骨折する状態です。
高齢者・骨粗鬆症患者に多く、軽微な外力や日常動作で発生することがあります。
腰痛、姿勢変化、身体機能低下を引き起こし、QOL(生活の質)の低下につながります。
1.圧迫骨折の主な症状とその影響
2. 腰椎圧迫骨折がバランス能力へ与える影響
3.圧迫骨折のリハビリの基本コンセプト
4.圧迫骨折についてのまとめ
1.腰椎圧迫骨折の主な症状とその影響
■ 急性および慢性期の症状
腰椎圧迫骨折では以下の症状が頻度高く観察されます。
- 激しい腰痛:特に立位・座位・体動時に疼痛が強く出現します。
- 動作痛・体位変換痛:寝返りや起き上がりで痛みが増強。
- 姿勢変化(円背・前傾姿勢):背骨が丸くなり、脊柱アライメント(背骨全体の形)が変化。
- 歩行や立位の不安定さ:筋力低下やバランス障害につながる。
- 日常生活動作障害(ADL低下):歩行や立ち上がりなどに支障。
- 慢性疼痛・機能低下:治療後も持続するケースあり。
これらは骨折部の構造的原因だけでなく、疼痛に伴う二次的な運動制限も含めて生じると考えられています。
2. 腰椎圧迫骨折がバランス能力へ与える影響

■ 姿勢・平衡機能の悪化
圧迫骨折は脊柱の位置や重心ラインを変化させ、 静的/動的バランスの低下 を引き起こします。
- 骨折患者は 安静時だけでなく動的条件下でもバランスが不安定 で、反応時間が長く反応制御が低下します(特に視覚条件が変化する状況で悪化)。
- 骨折既往がある女性は バランス機能・歩行能力・体力指標が悪化 し、転倒リスクが上昇。
- 骨折による前傾姿勢や胸椎円背は、 歩行速度低下・椅子立ち上がり遅延・リーチ距離の低下 と関連。
このように圧迫骨折を発症するとバランス(姿勢反応、歩行、重心移動など)の生活に必要なバランス制御に影響をきたすことが知られています。
これは、歩行やステップ、方向転換などにおいて、動きの根幹である体幹が安定性を失うことにより脚全体を動かすことにも支障が生じることを表していると考えられます。
圧迫骨折は単なる骨折ではなく、バランスに多大な影響を与えてしまいます。
Wang LY, Liaw MY, Huang YC, Lau YC, Leong CP, Pong YP, Chen CL. Static and dynamic balance performance in patients with osteoporotic vertebral compression fracture. J Back Musculoskelet Rehabil. 2013;26(2):199-205.
Okutan D, Terlemez R, Palamar D, Tüzün Ş. How vertebral fractures effect balance in postmenopausal women. J Bodyw Mov Ther. 2025 Jun;42:109-114.
Arima K, Abe Y, Nishimura T, Okabe T, Tomita Y, Mizukami S, Kanagae M, Aoyagi K. Association of vertebral compression fractures with physical performance measures among community-dwelling Japanese women aged 40 years and older. BMC Musculoskelet Disord. 2017 Apr 28;18(1):176.
■ 筋力低下と姿勢制御不全
圧迫骨折患者さんたちは 深層体幹筋(背筋・腹筋)の筋力が低下 ていることが報告されています。
骨による構造が破綻した状況にあるので、体幹筋肉に影響を与えることは容易に想像がつきます。
このように体幹の安定性低下はバランスをさらに悪化させる因子であると考えられています。
Makarova EV, Marchenkova LA, Eryomushkin MA, Styazkina EM, Chesnikova EI. Balance and muscle strength tests in patients with osteoporotic vertebral fractures to develop tailored rehabilitation programs. Eur J Transl Myol. 2020 Sep 9;30(3):9236.
3.リハビリテーションの基本コンセプト
腰椎圧迫骨折のリハビリは、基本的には次のようなコンセプトに基づいて構築されます:
① 姿勢改善と体幹安定化の強化
体幹安定性トレーニング(core stabilization)はリハビリの中心的要素です。
具体的には、一般的な上体起こしのような腹筋トレーニングではなく、
腹式呼吸や四つ這いでのトレーニング、体幹を固定したまま四肢(脚や腕)を動かすトレーニングが含まれます。
日常生活では、しゃがんだり、立ち上がったり、膝をついたりなど様々な動作が含まれますが、その際に過度に背骨が丸くなったりしないように、体幹の安定性を高めるために行います。
高齢者圧迫骨折患者のリハビリにおいては、体幹安定性訓練を含めることで 骨折後の機能回復を促進 する研究報告もあります。
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202402215984058450
②バランス練習と動的な安定性向上
バランス能力を改善するための訓練の内容:
- 静的バランス練習:足を一本橋のように縦にそろえる(タンデム)、片脚立位
- 動的バランス訓練:歩行・重心移動・反応時間改善訓練
前後左右への重心移動やステップの練習を行いながら、動的(動きの中で)バランスを鍛える練習を行う
- 視覚・感覚システム統合練習:目を閉じる、不安定地面での練習
閉眼を用いたり、さまざまな地面(柔らかい、すべりやすい)などを用いて難易度を調整する
Wang LY, Liaw MY, Huang YC, Lau YC, Leong CP, Pong YP, Chen CL. Static and dynamic balance performance in patients with osteoporotic vertebral compression fracture. J Back Musculoskelet Rehabil. 2013;26(2):199-205.
③機能的動作と日常生活活動の再獲得
- 起立・歩行動作練習:歩行速度・方向転換の練習
- 階段昇降訓練:安全かつ機能的に習得
日常生活に必要な動きを段階的に再獲得することが重要
3.エビデンスに基づくリハビリ介入の効果
■ 運動療法・理学療法の効果
- 骨粗鬆症性椎体骨折患者に対する 運動+徒手療法プログラム は、疼痛軽減、身体機能改善、背筋耐久性改善に効果が示されました。
- 運動介入はTimed up and go test (立ち上がり、歩行、方向転換の検査)に中等度の証拠がある ものの、転倒や新規骨折予防についてはエビデンスが未だ限定的です。
Bennell KL, Matthews B, Greig A, Briggs A, Kelly A, Sherburn M, Larsen J, Wark J. Effects of an exercise and manual therapy program on physical impairments, function and quality-of-life in people with osteoporotic vertebral fracture: a randomised, single-blind controlled pilot trial. BMC Musculoskelet Disord. 2010 Feb 17;11:36.
Gibbs JC, MacIntyre NJ, Ponzano M, Templeton JA, Thabane L, Papaioannou A, Giangregorio LM. Exercise for improving outcomes after osteoporotic vertebral fracture. Cochrane Database Syst Rev. 2019 Jul 5;7(7):CD008618.
■ 複合的なアプローチの効果
個別化されたバランス訓練、体幹筋活性化、動作訓練の統合アプローチは、機能回復に対して有望であるとされ、研究報告も増えています。
4. まとめ
腰椎圧迫骨折は 痛みのみならず、姿勢の悪化や、椎体の新規の骨折(骨折部の上下に生じやすい)、バランスや歩行にも悪影響を及ぼすといわれています。
リハビリ介入のエビデンスは限定的な部分もありますが、個人に対応した運動やリハビリが、痛みやバランス、歩行能力の向上に寄与することが報告されています。
臨床では個別化されたプログラムと段階的介入が鍵となります。
圧迫骨折にてお悩みの方に少しでも参考になれば幸いです。
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保有資格:理学療法士、修士(理学療法学)、認定理学療法士(運動器)
住環境コーディネーター2級
略歴:理学療法士免許取得後、大学病院に勤務し、整形外科、神経疾患、がんなど様々な疾患の理学療法に従事する。
その後、大手自費リハビリ施設にて勤務し、医学的根拠(エビデンス)の基礎を学び、店舗・訪問リハビリにて利用者様に尽力する。
エビデンスに基づくサポートができるように、多数の学会発表や論文執筆を通じてさまざまな疾患やトレーニングの学習に励む。
過去の経験を活かし、在宅でも本格的なリハビリをお届けするために、自費訪問リハビリサービスのRehab Tokyoを設立。


