パーキンソン病における効果的なリハビリ9選

1.パーキンソン病について

2.パーキンソン病のリハビリに関する研究紹介

3.パーキンソン病に効果がある可能性の高いリハビリ選


4.さいごに

1.パーキンソン病について

パーキンソン病は、振戦や、筋固縮、姿勢反射障害、寡動などさまざまな運動に関する障害を呈する疾患と言われています。

症状としては、関節が硬さを持ちスムーズな動きを障害してしまう筋固縮や、バランスを調整することやふらついた時の咄嗟の一歩が出にくくなる姿勢反射障害、四肢や体幹の協調的な動きが難しくなる協調運動障害などが生活に影響を及ぼします。

姿勢に関しては、背中の丸みをおびたり前傾姿勢やピサ症候群といわれる斜めの姿勢を呈することがあります。
歩行では、小刻み歩行freezing og gait(FOG)とよばれるすくみ足突進歩行など、日常生活に影響を及ぼしてしまう症状が発現することもあります。

上記のようにパーキンソン病では、円滑な動作を妨げる症状がいくつか存在し、それに対して何らかのサポートが必要となるケースが少なくありません。
そこで今回は、パーキンソン病の運動症状(ここではUPDRSⅢの運動症状)に対してどのようなリハビリやトレーニングが効果的であったかを示した論文を紹介いたします。

パーキンソン病やパーキンソン症候群の運動症状(小刻み歩行、すくみ足、固縮、動きずらさなど)でお悩みの方に少しでもお役に立てれば幸いです。

※UPDRSⅢは、パーキンソン病の評価であるUPDRSの中でも運動に関わる症状の評価になります。
具体的には、表情の硬さや話し方、四肢の振戦、筋強剛と呼ばれる硬さ、運動のスムーズさ(手指、手首、足など)、立ちあがりや歩行のスムーズさで評価されます。

2.パーキンソン病のリハビリに関する論文紹介

今回はこちらの論文を参考に解説いたします。

この論文は、複数のパーキンソン病患者にさまざまな運動を提供した研究をまとめ、どのような運動の種類が運動症状の軽減に役立ちそうかを調査した複合的な研究論文(ネットワークメタアナリシス)の研究になります。
複数の研究からわかるパーキンソン病患者に対して効果的なリハビリはどのようなものであるか? について論文をもとに解説いたします。

Ernst M, Folkerts AK, Gollan R, Lieker E, Caro-Valenzuela J, Adams A, Cryns N, Monsef I, Dresen A, Roheger M, Eggers C, Skoetz N, Kalbe E. Physical exercise for people with Parkinson’s disease: a systematic review and network meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2023 Jan 5;1(1):CD013856. 

今回の研究の概要

対象:パーキンソン病の成人患者を対象とした複数のRCT(ランダム化比較試験:割付がランダムに行われた確実性の高い介入試験です)
  参加者の平均年齢は64-74歳
  時期は2021年までの研究を対象としている

  

目的:パーキンソン病(PD)の成人におけるさまざまな種類の運動が運動症状の重症度に与える影響を良いものからランキング化すること


3.パーキンソン病に効果がある可能性の高いリハビリ9選

結果:
ランキングは下記の通りでした。

ランキング

運動の種類

効果の程度

確からしさ

1位

ダンス

中等度

高い

2位

水中トレーニング

中等度

低い

3位

歩行、バランス練習

中等度

低い

4位

複合的トレーニング

中等度

低い

5位

筋力、抵抗運動

中等度

非常に低い

6位

心身トレーニング

小さい

低い

7位

持久力トレーニング

小さい

低い

8位

LSVT BIG

小さい

非常に低い

9位

柔軟性トレーニング

ほぼ効果なし

低い

論文の解説

この研究において、最も運動症状を低下させるのは、ダンス、次いで水中トレーニングや歩行バランストレーニングという結果になりました。
各研究内の数値を確認すると、水中トレーニングから持久力トレーニングまではわずかな差でした。
このランキングは、UPDRSⅢにて評価されるパーキンソン病の運動症状の重症度に対して、より効果的であった(介入により得点が下がった)順番です。



1位のダンスは、効果が最も高く、タンゴ、ワルツ、ダンスセラピーなどが含まれています。
ダンスは音やリズムに合わせた多彩な方向へのステップや姿勢のコントロールを要求される課題であり、パーキンソン病患者においての聴覚刺激による運動の誘発や、姿勢反射障害への改善につながる可能性が示唆されています。
結果の確からしさも高く、研究結果に歪みが生じにくいデザインの研究で検証されているため、運動症状の軽減に役立つ可能性があります。

2位の水中トレーニングでは、水中での理学療法や、水中でのトレーニングが含まれています。
研究数が2件であり対象者数30名とややサンプル数に欠けるため、各人によって効果が異なる可能性も考えておく必要がありそうです。

3位の歩行、バランストレーニングには、ファンクショナルトレーニングやトレッドミルと呼ばれる歩行練習、各個人に応じたバランスエクササイズなどで構成されています。
一般的なリハビリはこの項目や、複合的トレーニング、持久力トレーニング、筋力トレーニングなどに含まれていることが多いですね。

パーキンソン病における言語障害と運動障害の改善を目的としたLSVT BIGや柔軟性のトレーニングはUPDRSにおける運動症状には影響が少なそうですね。
しかし、LSVT BIGの包含論文は1本、柔軟性トレーニングは単独で比較された研究が無かったため、まだ新たな研究の余地が
ありそうです。
とくに柔軟性トレーニングにおいては、筋固縮や協調運動障害により、関節の硬さがみられる場合には有効な可能性がありそうです。

これらの研究をさらに分析した感度分析では、パーキンソン病患者におけるリハビリ介入の期間は12週未満に比べて12週以上で効果が大きかったことを示しました。
このことは、運動の継続期間は3か月以上が望ましい可能性があることを示しています。

4.さいごに

今回は、パーキンソン病患者様におけるリハビリの効果的な介入9選についての論文を解説しました。
私も驚きましたが、多方向へのステップや音やリズムに合わせて運動を行うダンスが最も運動症状の改善に効果がありました。
一般的なリハビリである歩行練習や、バランス練習、筋力トレーニングなども効果は認められています。

パーキンソン病のリハビリにてお悩みの方に参考になれば幸いです。

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