1.肩、腰、股関節、膝関節、足関節など整形外科領域の疾患

2.整形外科疾患において、日常生活に支障をきたす症状

3.整形外科疾患のサポート内容


4.安全にトレーニングを続けるためのポイント

1.肩、腰、股関節、膝関節、足関節など整形外科領域の疾患

肩こりや腰痛といった身近な不調から、歩行や動作に支障をきたす関節の痛みまで、整形外科的な疾患は多くの人に影響を与えています。
ここでは、肩・腰・股関節・膝関節・足関節において特に患者数が多く、代表的な疾患についてご紹介します。

■ 頚椎症(けいついしょう)

首の骨(頚椎)の変形や椎間板の変性が進むことで、神経の圧迫が生じ、首・肩・腕のしびれや痛みが起こる疾患です。
加齢とともに進行することが多く、50代以降に増加します。重症化すると、手先の動かしづらさや歩行障害が出ることもあります。
特に頚椎症性脊髄症では、下肢の筋緊張が亢進し、痙性歩行といわれる、硬さのある歩行がみられることがあります。

■ 肩関節周囲炎(五十肩)

通称「五十肩」として知られ、肩の痛みと動きの制限を主症状とする炎症性の疾患です。
40〜60代の男女に多く、特に日常生活で腕を上げる・後ろに回すといった動作に支障をきたします。加齢やホルモンバランスの変化、肩関節の使いすぎなどが要因とされます。

■ 腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

脊椎の加齢変性により神経の通り道(脊柱管)が狭くなることで、腰痛や脚のしびれ、間欠性跛行(かんけつせいはこう)などが見られます。
長時間歩くと足がしびれて休みたくなり、座ると楽になるのが特徴です。60代以降の高齢者に非常に多くみられます。
治療においては、手術が行われることがあり、腰椎の一部の骨を削るものや、その後に脊椎の固定をする場合があります。
下肢の筋力低下や感覚麻痺が生じることもあり、術後のリハビリの有効性が示されています。

■腰椎圧迫骨折(ようついあっぱくこっせつ)

尻もちをついたときや転倒、骨粗鬆症などが原因として生じる、脊椎の中でも頻発する骨折になります。
1か所骨折してしまうと、続発性の圧迫骨折を呈しやすく、注意が必要です。
また、身体の垂直性が損なわれるために、バランス低下や転倒リスクが上がることでも知られています。

■ 大腿骨頸部骨折、大腿骨近位部骨折

転倒や骨粗鬆症などで大腿骨の根元の部分が骨折する疾患です。
多くは、大腿骨頭置換術(BHA)やプレート固定術、ハンソンピン、ガンマネイルでの固定術などが行われます。
一部の症例では術後の疼痛や、筋力低下のため歩行障害を呈することがあります。

■ 変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)

股関節の軟骨がすり減り、関節が変形していく疾患で、股関節の痛みや可動域制限、歩行困難を伴います。
日本では先天的な臼蓋形成不全(股関節の受け皿が浅い)が背景にあるケースも多く、女性に多く発症します。
手術では、人工股関節置換術(THA:Total Hip Arthroplasty)が多く実施されています。
術前の疼痛や可動域制限、歩行障害が強い場合には、術後の経過に支障を与えると言われています。

■ 変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)

膝の痛み・腫れ・歩行困難が特徴の慢性疾患で、特に中高年層の女性に多くみられます。
軟骨のすり減りや骨の変形が進むと、正座や階段の昇降が難しくなります。日本国内では約1,000万人以上が症状を自覚しているとされ、非常に一般的な疾患です。
手術では、高位脛骨骨切り術(HTO:High Tibial Osteotomy)や人工膝関節置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)がよく行われています。

■ 足関節捻挫・変形性足関節症

足関節の靭帯損傷による捻挫は若年層にも多くみられますが、繰り返すと関節が不安定になり、変形性足関節症に移行することがあります。加齢や体重増加、運動歴により進行するケースもあります。足の腫れ・痛み・不安定感が長期間続く場合は注意が必要です。

2.整形外科疾患において、日常生活に支障をきたす症状

整形外科的な疾患は、肩・腰・膝・股関節などの運動器に起こる障害を指し、年齢や生活習慣、ケガの影響によって幅広い年代に発生します。
これらの疾患が進行すると、日常生活の基本的な動作に支障をきたす症状が現れることが少なくありません。


現在の日本の医療保険において、整形外科的な疾患のリハビリを行える期間は150日となっています。
その後は、多くの方がリハビリ継続できないか、月に4時間ほどに制限がかかります。
病院によっては、歩行獲得など自宅での生活が可能となった場合に退院になることもあります。


このため、痛みや痺れ、感覚低下、歩きにくさなどの症状を抱えたまま、退院することもあるかと思います。
上記の疾患に関する症状において、下記にまとめてみましたのでご覧ください。

たとえば、「肩関節周囲炎(五十肩)」では、腕を上げる、服を着替える、髪を結ぶといった動作が困難になります。
また、「頚椎症」では、首や肩の痛みに加え、腕や手のしびれが現れ、パソコン作業や細かな作業に支障をきたすこともあります。

腰の代表的な疾患である「腰部脊柱管狭窄症」では、歩くと足がしびれたり痛みが出たりして、長距離の移動や買い物が困難になります。
数分歩いては座りたくなる「間欠性跛行」下肢の感覚低下や筋力低下に関しては、特に高齢者のQOL(生活の質)を大きく下げる原因です。

腰椎圧迫骨折では、腰部の疼痛や坐骨神経痛、姿勢が前屈みになる円背を呈することがあります。
上記に記したように、圧迫骨折は続発しやすく、トレーニングなどを通して筋力強化やバランス能力を強化する必要があります。

股関節や膝関節の変形性関節症では、立ち上がる、正座をする、階段を上る、長時間立つといった動作に支障が出ます。
初期は軽い違和感ですが、徐々に痛みが強くなり、動作そのものを避けるようになることで筋力や柔軟性が低下し、さらなる機能障害へとつながります。

足関節の捻挫や変形性足関節症も、歩行中の不安定感や痛みによって、外出やスポーツの継続が難しくなります。
とくに繰り返し痛みが出ることで「もう歩きたくない」と感じてしまう方も多く、活動性が著しく低下します。



このように、整形外科疾患は「痛み」だけでなく、「動かしにくさ」「しびれ」「不安定感」などを伴い移動、着替え、家事、仕事、趣味といった日常生活すべてに影響を及ぼす可能性があります。
こうした症状が長期化すると、中枢(脳やせき髄)の神経系や末梢神経系にも悪影響を与え、軽微な痛みや接触刺激でも強い痛みと感じてしまう「感作」が起きてしまうこともあります。

症状が慢性化・進行する前に、適切なサポートをしていくことが大切です。

3.整形外科疾患に対するサポート内容

上記のような症状に対してケアやトレーニング、環境整備の内容はどのようなものがあるのでしょうか
代表的なものを解説していきます。
基本的には、利用者さまの希望やなりたい姿によって変更していきます。

■ 筋力トレーニング

全身の筋力をチェックし、利用者さまの主訴(動きにくさ、動きによる痛みや痺れなど)に基づいて、筋力低下に起因すると思われる場合に実施します。
単純に筋力を伸ばすだけでなく、筋肉の使い方や筋発揮時のポイントを併せて指導していきます。

■ バランストレーニング

バランスは自立した生活に大きく影響を与えます。
バランス能力が低下していくと、近隣などにも外出していた方が、徐々に生活空間が狭小化し、自宅内のトイレや入浴移動のみになっていき、最後はベッド付近のみの生活空間になっていくこともあります。

バランスの構成要素を確認しつつ、低下した箇所や代償を効かせるための箇所にアプローチします。

■ モビライゼーション、ストレッチ

膝関節や股関節などの関節の動きに制限がある場合や、立ち上がりや歩行、段差昇降などで関節の動きによる制限によって痛みなどが生じているときに実施を検討します。
歩行や立ち上がりでは、膝関節や股関節は屈伸方向の動きだけでなく、回旋の動きも入るため、入念にチェックを行った後に制限があると思われる場合に行います。

バランスの構成要素を確認しつつ、低下した箇所や代償を効かせるための箇所にアプローチします。

■ 動作指導、動きのチェック

痛みや痺れ、歩きにくさなどは病院でのリハビリを卒業した後も続いてしまうことがあります。
上述したように、入院中や外来のリハビリは制限されてしまうことが多く、上記のような症状は残存することが少なくありません。

そこでとても重要になるのが、動きの確認になります。
生活動作の中でも、寝返り、起き上がり、立ち上がり、座っているときの姿勢、立っているときの姿勢、歩行の姿勢を確認し、症状の出現に関する項目を調べます

その後、動作に関する指導を行います。
トレーニング一つとっても、姿勢によって利き方が異なり、場合によっては患部を痛めてしまうこともあります。
指導例:スクワット編
症状は、何気なく行っている姿勢や歩き方の蓄積が原因となり生じていることが多いです。
根本から体の動かし方を調整し、変化させることで、利用者さまのお悩み改善に向き合います。

4.安全にトレーニングを続けるためのポイント

  • 主治医の先生の判断を必ず仰ぐ:特に心血管疾患・骨折リスクなどがある場合、開始前に確認必須。
  • 炎症所見の増悪がないことを確認:夜間の痛みやうずくような痛み、腫脹は炎症増悪が懸念される。
  • 無理のない強度から開始:実施前後に血圧や脈拍などを測り、過度な疲労・息切れ・めまいが出たら速やかに中断する。
  • 記録と振り返り:セラピストが毎回のトレーニングを記録し、段階的にレベルアップ。
  • 介助者との連携:必要に応じて、ご家族・介助者に補助や見守りを依頼。

最後に

この記事のご覧の方の中には、
「どのようなトレーニングが有効なのかわからない」、「もっと〇〇が改善されれば・・・」、「最近は機能の向上が少なくなってきた」
など、お悩みが沢山あると思います。

そのような方々に対して少しでもお力になれればと思っています。
私たちは些細なお悩みでも出来る限りお答えさせ頂きます。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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